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系統的脱感療法という長ったらしい名前の治療法は、私の治療経験では、とくに、手掌多汗症に顕著な効果が認められます。
この治療法は、ある刺激場面(ここでは手に汗をかいたような場面)で緊張反応を示すとき、この緊張反応とは相容れないような、逆に、リラックスするような反応(具体的には、後述する自律訓練法という練習で得られた弛緩反応)を生起されると、患者さんの緊張反応は制止されるというものです。
簡単にいえば、訓練によって意図的に自分の自立神経をコントロールできる方法を身につけさせるというものです
ここで自律訓練法について、説明しましょう。
自律訓練法は、元来、自己催眠法から発展したもので、現在ではさまざまな方法が開発されています。一般的には、病院で、おおよその練習法を体得し、あとは自宅で朝夜の一日二回ほど行なうことが多いようです。
具体的には、できるだけ弛緩しやすい姿勢で、静かな、あまり明るすぎない部屋であおむけになり、
「気持ちが落ち着いている」という安定感の練習から、
「両手両足がとても重たい」(重量感の練習)
「両手両足がとても温かい」(温感の練習)
「心臓がとても静かに打っている」(心臓調整の練習〉
「とてもらくに息をしている」(呼吸調整の練習)
「胃のあたりが温かい」(腹部の練習)
「ひたいが涼しい」(頭部の練習)
へと順次すすめていきます。
各公式をマスターするに、普通は3カ月から6カ月ほどかかりますが、自律訓練法は、患者の体得の意志さえあればだれでも技術を習得でき、治療への応用としてのみならず、日常生活のストレス解消、心身の健康増進といった意味で、積極的に取り入れて良い方法だと思います。
手掌多汗症への応用として、温感の練習は逆に、手に汗をかくのではないか、という疑問をもたれるでしょうが、実際には不思議とかかないものです。
ひととおりの公式をマスターしたなら、特殊練習として「手足が涼しくなる」といった冷感の練習も効果的でしょう。 さて、こうして、自律訓練法によって弛緩反応が十分得られたなら、いよいよ、系統的脱感作法にうつるわけですが、その前に、「不安階層表」といったものを作成します。これは、患者が過去に緊張反応(手に汗かく状態)を示した刺激場面を、面接や心理テストなどで調ベ、その刺激度を、小さいほうから順に大きいほうへ並べます。
つまり、過去に手掌に発洋したさまざまな場面を10場面選抜し、発汗の少ないほうから多い方まで順次並ベ、最小を0、最大を100として行ないます。
たとえば、
(1)自分の部屋で一人でテレピを見ている
(2)自分の部屋で、一人でゲームをしている
(3)自分の家で、家族と話をしている
(4)冬、戸外から暖かい教室に入っていく
(5)梅雨時、ムシムシする電車のなかにいる。
(6)試験中
(7)会社の職場面接を受ける
(8)日頃好意をもっている異性と話をする
(9)会社でみんなの前で発表する
(10)同僚から、手に洋をかいていることを指摘される
以上のような不安階層表が作成されたなら、患者さんは緊張度の低い1の場画からそのイメージを思い浮かべる。そして、イメージすることによって、緊張反応(手に汗をかくこと)が生起できたなら、患者さんはただちに、自律訓練法で体得した弛緩反応で、緊張反応を逆制止させます。
ひとつの場面に対して、逆制止によって緊張がなくなったなら、不安階層表にしたがって、順次、次の場面における緊張を逆制止させていきます。このようにして、最終的な緊張場面に対して緊張がなくなるまで逆制止を行なっていきます。
こうしたやり方を脱感作といい、系統的に順次行なうため、この療法を系統的脱感作法といい、さらに、これらの療法をまとめて、行動療法と呼んでいます。
これらの行動療法は、自律訓練にせよ、脱感作にせよ、治療者と患者双方に、時間と根気が必要ですが、この方法は比較的、精神安定剤などの薬物を便用せずに、かなりの治療効果が得られる点で、応用価値があります。
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